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電車が停車したと同時に俺と遥は席を立ち、ホームへと足を踏み入れた。まあ、一緒に隣を歩いているわけではなく、遥は俺の少し前を歩いているんだけど。
(あっ、遥、俺より若干背低いんだ)
遥の身長は多分175cm…くらいか?俺の身長が178ぐらいだから、遥も全然身長が高い。ただ、ぶっきらぼうでツンとしてる遥が俺よりちょっと背が低いことがどことなく可愛く思えた。
「…お前さっきから何ジロジロ見てんだよ」
「えっ!?あっ、いや…」
遥は背後を振り返り、俺に言った。つい、俺は遥をジッと見てしまっていた。
「さっきからずっと視線感じんだよ」
「ご、ごめん、考え事してた」
つい見惚れていたなど遥に言えるはずがない。
遥の捲っているシャツの袖からチラリと覗かせる白い肌にさえ、ついドキッとしてしまう。俺はここで、完全に遥に心寄せているのだと気付いた。
「…あっ、遥、俺改札こっちだから」
危ない、つい学校に行くことを忘れて、遥に見惚れてついて行ってしまうところだった。俺は改札を指差しながら遥へ言った。
「あー、まじ。んじゃーな」
遥の表情が一瞬読めなかったが、遥はその後柔らかく微笑みながら俺を見てそう言い、先にある改札まで歩いて行った。俺も遥にひらひらと手を振り、改札を目指し一人で歩き始める。
(…あー!待って何これ何これ、やばいんだけど…!)
俺は一人になった瞬間、急にボッと湧き上がってくる謎のドキドキと恥ずかしさに襲われた。顔一面が凧の様に紅くなっていく感覚が自分でさえ分かる。
(何このドキドキって感覚…今までこんなに人にドキドキした事ないのに)
今までBL漫画のキャラにしかときめいたことの無かった俺が、ついに今、現実で有り得ない程にドキドキしている。
(っあー、俺朝からこんな情けない顔して恥ずかし…)
俺は紅くなった顔を隠すかのように手で頬を覆う。
電車の中で他校の高校生の肩に持たれてしまって迷惑をかけてしまったが、その高校生はイケメンで優しくて…ここから恋愛へと発展していく物語…
(こういうBL漫画ありそう…最高じゃん)
どうしてもBL漫画のシチュエーションに憧れを抱いてしまっている俺は、つい無意識にこんな事を考えてしまう。
(…遥に俺の本性知られたらどうなんだろ…)
(ていうか、肩にもたれてる時絶対重かったよな…俺のバカ…泣)
俺は火照る顔を手で扇ぎながら、歩きながら一人、反省会をする。
そうして俺は改札を潜り抜け、うるさい程に響き渡る蝉の鳴き声のする地上へと出た。
(あー…外暑…熱中症になりそう…)
俺の火照る顔がより一層夏を加速させているように感じる。俺は遥の事で頭をいっぱいにさせながらも、なんとか重たい足をあげ、学校へと向かったのだった。
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