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「今度、京都で個展を開くって聞きました。絶対見に行きます」
「そうか。ま、暇があったら来てくれ」
「今度の個展は、太陽と月、昼と夜、生命の営みがテーマなんですよ」
と3人分のお茶を淹れた狛太が庭へ戻って来た。縁側にひまりを座らせ、お茶を並べると、3人は買ってきたお菓子でお茶を飲む。ひまりが買ってきたのは鯛最中だった。
「おお、最中じゃねぇか!やったぜ」
「先生、昨日、大福を3つも食べていたじゃないですか。これはお預けです」
そう言って狛太は雅也の分の最中を箱にしまった。
「おい!せっかく買ってきてくれたんだから喰わねぇともったいねぇだろ」
「先生の甘い物好きは異常です。糖尿になったら大変ですよ?お腹に注射しなきゃいけないんですよ?」
「う…けど、俺は若いんだから平気だよ」
「そんなこと言って調子に乗ってちゃいけませんよ!」
ひまりはくすくすと笑いながら、狛太の淹れた茶を一口すすった。
「ああ、すみません。個展の話でしたね。先生は最近、海を眺めたり、山に登ったり、近くの農村に行って畑をする様子を見学したりしてるんですよ」
「へぇ、それも創作のために?」
「まあな。自分の心から湧くものを形にしなきゃ、人の心を動かす書は作れない」
そういいながら、雅也は庭の花に視線をやる。パンジーの足元に生えた細かな雑草が気になるようで、しゃがみこんで雅也はそれを引き抜き始めた。
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