0人が本棚に入れています
本棚に追加
「これで最後か……」
俺はそう、小さくつぶやいた。
ひとつ、ふたつ……。みっつか。
目の前には、いくつか用済みのたまが散らばっている。
それらを指さし、意味もなく数えあげて肩を落とした。
非常に情けないことではあるが、それらは全て不発で、可哀想なくらい冷たく転がっている。
イメージは完璧だった。
角度、タイミング、力加減。
技術面に余念はない。
集中力や動体視力。
自身の能力、体調面もすこぶる良かった。
今日は全てがそろった最高のコンディションである。
それに加え、非科学的ではあるが神にだって誓ったし、日頃の行いを少々悔やみつつも、お天道様に一生懸命拝んでいた。
そう。俺の残念すぎる単細胞アタマで思いつくようなできることは、全てやった。
それなのになぜ、いまだにひとつも当たらないのか。
心底、不思議である。
ここまでくると最早、なす術なしか。
俺は若干、戦意喪失気味の中、軽く首を傾げ、汗ばんだ手を2度ジーンズに擦り付けた。
そして再び、少し錆びた金属部分に手をかける。
さっきまで握っていた時の熱は、既に感じられずすっかり冷めていた。
これまでの歴戦の戦士たちによる汗の影響か、この金属部分はうっすら茶色に酸化している。
あぁ、そんなこと考えてる場合ではなかった。
俺は頭の中から邪念を振り払い、ただならぬ緊張感の中、片目をつぶり、そして手に力を込めた。
最初のコメントを投稿しよう!