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こうして、じょうを乗っ取った一回目の一日が始まった。
夢の続きをまだ眠って見ているのだと思い、顔から足までパンパン叩いて自分を起こそうとする。
が、痛みはきちんと伝わり、五感はしっかりしている。
夢では……ない?
スマホの電源を入れると、案の定じょうが設定しているキャラクターのロック画像が表れた。
そして、パスワードを待つ画面。
数字四桁。分からない──はずだった。
指が勝手に動き、0808を押す。
すると、スッとホーム画面へ切り替わった。
どうやら、じょうの無意識レベルのことは、覚えてる、ってこと……?
数あるアプリの中から、通知がきていたLINEをタップした。
開くとトーク一覧に導かれ、通知は唯一ピン留めしている相手『れい』からだった。
じょうの周りの人物に、『れい』は覚えがない。
おそるおそる『れい』とのトーク画面を展開すると、『おはよう(スタンプ)』が送られてきているだけだった。
少しホッとした。
『れい』とのトークを遡って見ると、
れい『おはよう(スタンプ)』
じょう「おはよう(スタンプ)」
じょう「おやすみ(スタンプ)」
れい『おやすみ(スタンプ)』
じょう「今コンビニで売ってるこのグミおいしいよ〜(グミの画像)」
れい『そうなんだ。今度見かけたら買おっかな』
程度の会話ばかり。
じょうの男友達、かな?
『れい』には、いつもじょうが送っているおはようスタンプを送り返した。
その送信時間を見て、ギョッとする。
私が一人暮らししている家からだったら、講義の時間に間に合わない。
慌ててベッドを抜け、着替えようとする。
そして、今は私がじょうなんだと、男の身体を見て気づかされる。ひなみじゃない。
では、今〝ひなみ〟はどうしているのだろう。
会いに行ってみる、?
私はベッドサイドテーブルに置かれた、綺麗に畳まれた服をきた。
細身のスラックスに、ゆったりとしたTシャツ。じょうがよく着ているスタイル。
次の日に着る服を、前日の夜に準備しているのか。
そういうしっかりしたところも好きだなあ。
いつも大学へ持ってきているバッグも、勉強机の上に用意されている。
それを持って、ひとまず〝ひなみ〟に会いに行くことにした。
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