私を口説けません!

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 寝起きの頭は軽かった。ひどい眠気もない。  目を擦る手も、男性的なゴツゴツしたものじゃなく、柔らかい。  身体の膨らみは、股間ではなく胸にある。  私の身体だ。  やけに不思議な夢を見た。……のかな。  起床したときのルーティン。枕元のスマホを立ち上げる。  表示されたロック画像は、もちろん私が選んだものだ。  ロックを解き、LINEを開く。  トーク一覧の一番上に表示されたのは、じょうの名前。  何気なくじょうとのトーク画面を開くと、そこには『体調は大丈夫になった?』から始まる、じょうを乗っ取っている間にしたトーク履歴が残っていた。  えっ、と思わず声が出る。  すぐに画面をスクロールして、今日の日付を確認した。  高熱を出していた日から丸一日が経過していた。  これらが示すのは、じょうを乗っ取っていたことは、夢じゃないってこと。  頭を叩いて、夢の中の魔女が言っていたことを懸命に思い出す。 『ちなみに魔法は三回まで。これは魔法界のお決まりよ』  つまり、あと二回ある。  この摩訶不思議な乗っ取りが。  あと二回できる。  どうする?  ……決まってる。  私と交際させたい。  その日は一日中、夜に夢の中で魔女に再び会うことだけを考えて過ごした。  じょうを乗っ取った二回目は、〝ひなみ〟を口説き落とす。  そう意気込んで眠った夜に、きちんと魔女と再会を果たした。  翌朝、私はじょうになっていた。
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