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三回目も、やっぱり『れい』とのおはようLINEを済ますことから始まった。
そして今回も例に漏れずこりゃまたひどく眠たい。が、最後の乗っ取りの機会なわけだから、そんな甘えたことはいってられない。
午前中の講義だけで、今日は大学が終わる。
午後に水族館へ〝ひなみ〟をデートに誘う。
水族館デートも、私の理想の一つだ。
二人で魚を眺めるが、私は気が気でない。
いつ〝ひなみ〟に告白しようか。
どんな言葉で伝えようか。
銀色の魚の群れが円を描いて泳いでいる。
他にも大小さまざまでカラフルな魚たちがいる大きな水槽の前。
「わあ。キラキラしてるねえ」
目を輝かせる〝ひなみ〟に、私は向き直って。
「ねえ、ひなみ」
「す、好きだから、付き合ってほしい」
〝ひなみ〟も私も、時が止まったかのようだった。
「え、え? 本当? 本気で言ってる?」
「うん」
真剣な眼差しを〝ひなみ〟に注ぐ。
すると、〝ひなみ〟は私の目を見て、
「嘘だね。ここ最近のじょう、なんか変だもん」
…………え?
〝ひなみ〟は私の視線から逃げるように、水槽の中で優雅に泳ぐ魚たちに目をやる。
「この前二人でご飯を食べたときだって、なんかじょうは私の機嫌をとろうとするように、取り繕ってるみたいだった。今日だって、どこかうわの空だよね」
〝ひなみ〟がこちらへ向き直る。
「じょうのことよく見てるから分かるよ」
言葉が出てこなかった。私は相変わらず機転が利いたことが言えない、その場でパッと思い浮かばない。
「……ははっ。たしかにひなみの言うとおりかも」
ギリギリ笑ってごまかせたかな。自信がない。
「ちょっとお手洗いにいってくるよ」と言い、〝ひなみ〟をその場に残した。
急ぎ足で男子トイレに入り、個室に閉じこもる。
そっか、そっか。
そうなんだ、そうだった。
どこかで気づくべきだった。気づけるはずだった。
私は──私がなれないじょうが、好きなんだ。
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