第9話 キャロルの授業

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第9話 キャロルの授業

 キャロルさんについて行き、大きな扉の前へ。  ウィル君とエミリーさんはここで待っていてくれるらしく、キャロルさんと二人で中へ。  中はかなり広いホールになっていて、私と同じくらいの男女が二十人程くらい居た。 「お待たせしました」 「先生、遅いですよ」 「すまんな。これでも忙しい身なんですよ」  中に居た一人の男性が、キャロルさんの事を先生と呼び……あ、この魔法学校の生徒さんたちなのかな?  という事は、私もこの生徒さんたちと一緒にキャロルさんの授業を受けられるという事ね。  これはちょっと嬉しい。  幼い頃に、独学で時魔法が使えるようになったのに、長女だから……と、魔法学校ではなく貴族学校に入学させられてしまったのよね。  貴族学校は貴族学校で、確かに得る物はあったけど、魔法学校への憧れみたいなのを今も持っているし。 「では、早速始めましょうか。私がターゲットなる物体を魔法で十個出します。一定の速度で動くので、それを魔法の矢で狙って撃ち落としましょう」  あ、なるほど。講義じゃなくて実技の授業中なんだ。  だから教室ではなくて、ホールなのね。  という訳で、生徒さんたちが五人一組で挑戦し、時間と個数を競っているみたい。  魔法の矢……と、使う魔法の種類を指定しているのは、よく狙う練習なのかな? とはいえ、実際の魔物は一定速度で移動しないし、こちらの攻撃の気配を察して避けたり逃げたりするし……あっ! 魔法を學校にはそういう競技があるのかも! 「よしっ! 一番小さい奴を倒したぜっ!」 「ふふん。けど、アンタが苦戦している間に、大きいのは私が貰ったわ」  あ、やっぱり何かしらの競技なんだ。  小さい方が点数が高いとか、そういうルールみたいね。  それにしても……的を外した魔法の矢が何度も壁に当たっているけれど、全く傷が付いていない。  いいなぁ。攻撃系の魔法は試せる場所がなかったから、こっそり森へ行って、目立たないように練習したんだよね。  ここなら、雨の日でも魔法の練習が出来る……流石は魔法学校だ。 「さて、気付いている方も多いと思いますが、今日は特別に校外の聴講生が参加されています。独学で魔法を学んだそうなので、その実力の程を見てあげましょう。クライヴ君」 「……」  キャロルさんに呼ばれ、生徒の一人がやってきた。  クライヴ君と呼ばれた男性は、眼鏡を掛けた、私と同い年くらいの利発そうな人だけど……覇気がないというか、あまりやる気が無さそうに思える。 「では、アルマさん。このクライヴ君と一対一で勝負してもらいましょう」 「は、はい……あの、ちょっと良いですか?」 「何でしょうか」 「えっと、何処までやって良いのでしょうか。生徒さんに勝っちゃうとマズかったり……」  あ、クライヴ君に聞こえちゃったかも。  相変わらず無言だけど、ちょっとイラっとしている感じがする。 「ふっ、勿論全力で構いませんよ。というか、ちゃんと本気でやってください」 「あ、はい。わかりました」  んー、これは完膚なきまでに打ち負かして、クライヴ君のやる気を出させようって作戦ね!?  そういう事なら、任せてもらおう。 「では、二人とも準備は良いわね? それでは……スタートっ!」 「風魔法……風塵の矢」 「……は?」  あれ? スタートって言われたから的を射抜いたのに、キャロルさんが絶句してしまった。  風魔法を含む、火魔法、水魔法、土魔法の四魔法は基本魔法と言われていているんだけど、その基本である風魔法すら独学だから、変に思われているのだろうか。  十歳になって、魔法が使える事を改めてお父様に話し、ようやく閲覧を許可されたんだけど……。 「ま、待て! アルマ嬢……今のは、どういう事だっ!? どうして、無詠唱で魔法を放ち、かつ同時に十本も風の矢を放ったのだ!?」 「え? 無詠唱……って普通じゃないんですか? それに、風塵の矢も十本同時に出すように変えただけですけど?」 「普通な訳あるかぁぁぁっ!」  キャロルさんは、どうしたんだろう。  生徒さんたちの前だというのに話し方まで変わってしまっているけど……良いのかな?  そんな事を考えていると、クライヴ君が近付いてきた。 「……先生! いえ、師匠! どうか俺に魔法を教えてくださいっ!」 「待て待……こほん。クライヴ君。その者は外部の者で……」 「師匠! どうか俺を弟子に……」  いやあの、急に師匠とか弟子とか言われても、私が魔法を学びたい側なんだけど。  とりあえず、未熟な私に魔法を教える事なんて出来ないし、ここにはキャロルさんがいる訳で……って、待って! 跪かないでっ! 師匠って呼ばないでぇぇぇっ!
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