第13話 浄化

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第13話 浄化

 まずは、この穴に誤って誰かが落ちてしまわないように、土魔法で柵を作る。  私の身長よりも高い柵で囲い、隙間から中の様子も覗けるようにしたので、誤って落ちる人はいないだろう。 「河から水を取り込む時は、先ず水に混じっている泥や砂を沈める……というお話でしたよね?」 「えぇ、その通りです。その為に大きな浄水槽があって、その上の方の水を次の浄水槽へ流しています」 「では、ここも同じ方式にしましょう。隣に同じような穴を作って、上澄みだけが流れるようにします」  という訳で、ケヴィンさんへ説明した通り、少し離れた場所にまた穴を掘り、上の方の水だけが流れるように、角度を付けて穴を通す。  ついでに、出てきた岩を網状にして、大きなゴミが流れ込むのを防げるようにしておいた。 「……あの、アルマ様。これだけの事を二回も行われて、魔力量は大丈夫なのでしょうか?」 「はい。簡単な基礎魔法しか使っていないので平気ですよ?」 「……簡単?」 「それより、次は濾過でしたっけ?」 「そうですが……上澄みとはいえ、こちらの水は濾過しても綺麗にならないのではないかと」  元々綺麗な河の水と、様々な用途で汚れた水……確かにケヴィンさんの言う通り、同じ方法ではダメな気がする。 「では、この穴で水を綺麗にして、次の穴で濾過しましょう」 「綺麗に……って、どうするんですか?」 「それをこれから考えたいと思います」 「考えると言っても、水と一緒に取り込んでしまう土砂やゴミを取り除くのとは訳が違うと思うのですが。実際にご覧になられますか? 物凄く汚れた水ですよ!?」  そう言って、ケヴィンさんが研究所の中へ。  暫くすると、ケヴィンさんと共に、悪臭を放つバケツを持った、所員さんと思わしき涙目の男性がやってきた。 「えっと、今しがた採取した排水です」 「アルマ様。これ……ですよ? 流石に無理かと」 「いえいえ、方法は幾つかあります。例えば、水魔法……沈殿」  その名の通り、水と不純物とを完全に分ける魔法で、バケツの上の方は、澄んだ透明な水になっている。 「は? えっ!? えぇっ!?」 「えっと、そこの大きな穴でやろうとしている事と、だいたい同じですよ?」 「い、いえ、でも一瞬で……」 「とはいえ、これだけだと、まだ綺麗とは言い難いです」 「確かに……まだ少し臭いますね」 「ですので、水魔法……浄化」  浄化魔法で、見えない汚れが綺麗になり、臭いが完全に消える。  ケヴィンと所員さんが驚いているけど、基本って書かれた魔道書に書いてあったんだけど。  ひとまず、これを誰かが毎日数回やれば良いんだけど、水は夜にも流れてくる訳で、なかなかに難しい。  なので、今行った事が勝手に行われるようにしたいんだよね。  そんな話をしていると、何故か驚きっぱなしだったケヴィンさんの表情が一変する。 「……アルマ様。魔石という物をご存知でしょうか」 「魔法を吸収して、その効果を放ち続ける不思議な石……ですよね?」 「はい。一つあれば家が建てられる程に高価な物ですが、領主様から街の為に活用せよと、百個預かっています。魔石は、一度魔法を込めると、変更が効かない為、今まで一度も使えなかったのですが……今こそお使いいただく時かと!」 「なるほど。沈殿は穴の中で時間を掛ければ出来るので、浄化魔法の効果を込めれば良いんですね」  魔法を込められる魔石は確かに凄いんだけど、複雑な魔法……魔力を沢山必要とする魔法を込めると割れてしまう。  なので、魔石の大きさと、私が込める魔法の強さのバランスを考えないとね。  そんな事を考えながら、魔石が保管されているケヴィンの部屋へ。  綺麗に並べられた魔石の中から、そこそこ大きな拳大の物を一つ手にする。 「じゃあ、早速一つ貰って良いですか?」 「良いですが、それ一つで家が建つので、くれぐれも慎重に……」 「水魔法……浄化」 「アルマ様、慎重にぃぃぃっ!」  早速魔法を込めると……あ、割れちゃった。  結構抑えたつもりだったんだけど、これくらいでもダメなんだ。 「あぁぁぁっ! 貴重な魔石がぁぁぁっ!」 「あ、大丈夫です。元に戻すので。時魔法……時間遡行」 「えっ!? 魔石が元通りに!? えっ!? えぇぇぇっ!?」  さて、実験開始ね。
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