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第14話 環境改善
研究所で汚れた水を浄化される魔石の研究を始めて数日。
それぞれの魔石にどれだけ魔力が込められるかは、大きさや質によってバラバラで、実際にやってみないと分からない事が判明した。
だけど、それぞれの魔石に許容魔力量の限界ギリギリとなる浄化魔法を込め、失敗して割れたら時魔法で戻すという事を繰り返す。
最終的に、十個の魔石に浄化魔法を込め、一つ目の穴から二つ目の穴へと繋がる穴に設置した。
「出来たーっ! 一つ目の穴が満杯になる前に終わって良かったー!」
「そうですね。あと数時間もすれば、二つ目の穴への注ぎ口へと水が到達するでしょう。うちの所員がチェック致しますので、暫しお待ちを」
今回の為に物凄く長い柄杓を作っていたみたいで、これで注がれた水を採取し、水質をチェックするそうだ。
まだ時間が掛かりそうなので、研究所内で休憩していると、ケヴィンさんが走り込んできた。
「アルマ様! ご覧ください、この水を! 何の臭いもせず、無職透明……流石です!」
「良かったです。頑張った甲斐がありましたね」
「流石はアルマ様です。まさか魔石を一つも無駄にする事無く、最小限の使用で浄化を達成されるとは……普通なら魔力込めの失敗で、この倍は無駄にするというのに」
という訳で、結果は大成功だった。
一つ目の穴……というか深い池で不純物をゆっくり沈殿させ、その上澄みが二つ目の池に注がれる仕組みにしたんだけど、そこへ注がれる時に魔石の力で綺麗に浄化される。
なので、二つ目の池は物凄く綺麗な水なんだけど、念には念を……という事で、三つ目の池へ注がれる際にしっかり濾過を行って、その上澄みの水を河へ戻す事にした。
高低差を利用しているので水の流れに動力は不要だし、各池には柵と屋根を付けたので、安全性も更に増したはずだ。
二つ目の池と三つ目の池が満杯になるは暫く先だと思うけど、その時に改めて河の様子を確認しよう。
「あの、ケヴィンさん。あと何個か魔石を使っても良いですか?」
「構いませんが……何に使われるのですか?」
「今回は汚れた水を綺麗にして河へ戻すのに使いましたが、河から取り込んで各家へ送る際にも綺麗にしておこうかと思いまして」
河から取り込んだ水は、見た目は綺麗なんだけど、煮沸や蒸留なしに飲む事は出来ない。
目に見えない悪い何かが含まれているというのが、通説となっている。
浄化魔法を使えば、その何かを除去出来るので、より綺麗で安全な水を、各家で使えるようになるはずだ。
という訳で、追加で魔石を使わせてもらい、数日掛けて排水と同じように複数の魔石の限界まで浄化魔法を込めていると、ケヴィンさんがやってきた。
「アルマ様! 河への放水が始まりました」
「すぐに行きます」
ケヴィンさんや、他の所員さんたちと共に、排水の放水場所へ。
以前はこの近くへ来るだけで嫌な臭いがしていたけど、この前のような臭いはない。
「信じられない。あの地獄のような臭さがしてこない。これは……放水しているんですよね?」
「はい。あちらの水は、間違いなくアルマ様が作られた池からの水です」
ケヴィンさんと所員さんが驚いているけど、私としても、上手くいって良かったと思う。
ちなみに、大きな三つの池で排水を綺麗にしていた為、既に数日間は河に汚れた水を流していない。
その為、ここからでも河の中に小魚の姿が見られる。
今日から排水が再開されたので、所員さんが暫く河の様子を観察し、また報告してくれるそうだ。
以前は魚も棲めない河だったので、相当酷かった訳だけど、かなりの改善ではないだろうか。
「アルマ様。ありがとうございます」
「いえ、ケヴィンさんが魔石を使わせてくれたおかげです。この調子で、取水側も浄化出来るようにしちゃいますね」
この後、取水側も無事に浄化されるようにしたんだけど、その数日後……想定外の事が起こってしまった。
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