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第18話 やらかしアルマ
「アルマ様! アルマ様ーっ!」
研究所の一室で、街の人の為に魔法を活用出来ないかと考えていたら、ケヴィンさんが飛び込んできた。
「はい。何でしょうか?」
「怪我人だそうです! 魔物に遭遇して大怪我を負っているとかで……診ていただけないかと」
「すぐに行きます!」
大慌てでケヴィンさんについて行くと、全身に深い切傷を負った男性が寝かされていた。
私が使える時魔法では、時間を戻せるのは身体の一部だけ……いえ、考えるのは後! とにかく、怪我が酷い箇所から戻していこう。
服に着いた血の渇き方からすると、私が戻せる時間ギリギリのはず! 急がなければ!
「時魔法……時間遡行!」
おそらく身体を庇ったからだろう。
一番酷い両腕の時間を戻す。……上手くいった!
次は、顔と首。最後に両脚だけど、私の魔力が……何とかもって!
「時魔法……時間遡行!」
「身体が……聖女様っ! ありがとうございます! ……聖女様っ!?」
「アルマ様っ!? これは……魔力枯渇!?」
短時間で時魔法を三回使ったからか、目眩がしてしまったけど、怪我をされた方は……うん。怪我をする前の状態に戻せたようで、起き上がっている。
「良かった。無事に治りましたね」
「聖女様っ! ……大丈夫でしょうか」
「はい。少し魔力を使い過ぎただけです。休めば治りますので。それよりも、魔物は?」
「魔物は倒せてはいませんが、追い払ったのでご安心を」
どうやら他に被害は出ていないようなので、そのまま横にならせてもらう。
……気付いた時には、研究所の医務室に運ばれていて、すぐそばにエミリーさんがいた。
「あれ? エミリーさん? どうして?」
「お目覚めになられて良かったです。アルマ様が魔力枯渇で倒れられたと聞き、飛んで参りました」
「心配を掛けてごめんなさい。もう大丈夫です」
そう言って、ベッドから降りようとしたものの、足元がふらつき、エミリーさんに支えられる。
「アルマ様。もう少しお休みください」
「……わかりました」
ベッドで横になりながら、今後どうすれば良いのかを考える。
魔物による被害を減らす為に、お爺様へ依頼して、討伐する為に騎士団を派遣してもらうのが一つ。
魔物と遭遇しないような仕組みや、遭遇しても撃退出来る仕組みを作るのが一つ。
そして魔物に限らず、怪我をされる方は居るので、私が時魔法を使える回数を増やすか、範囲を広げるのが一つ。
……一番容易に実現出来そうなのが、三つめだろうか。
これなら工夫しだいで何とか改善出来そうだし、何より最近魔石の研究で魔法を沢山使っていたからか、私の体内にある魔力が増えている気がする。
以前は時魔法を三回連続で使うなんて、出来なかっただろうし。
いろいろと考え……方針が決まった。
「よし。もう、大丈夫です」
「本当に大丈夫ですか?」
「えぇ。エミリーさん、付き添ってくださってありがとうございます」
医務室から出ると、ケヴィンさんに断り、先ずはお爺様の所へ。
「……という訳で、魔物に襲われる被害が出ています。以前にも魔物に襲われた方を治しておりますし、周辺の魔物を討伐出来ないでしょうか」
「わかった。では王都に騎士隊を派遣するように要請しよう」
「よろしくお願いします」
お爺様が快諾してくれたので、数日後には騎士さんたちが派遣されてくるのだろう。
ひとまず魔物の討伐は任せるとして、私が考えるべきは、如何に時魔法を効率的に使うか……ね。
今日の方は無事に助ける事が出来たけど、もしも怪我人が複数人居たら、助けられなかった。
術式の改良が必要ね。
無詠唱で魔法を発動させるにしても、頭の中ではしっかり術式を構築していているから、それを改善すればいけるはずだ。
「時魔法……時間遡行!」
魔法の効果範囲を広くしようと試行錯誤するけど、なかなか上手くはいかない。
それどころか、頑張り過ぎて気絶してしまったようで、気付いた時には夕食の準備が出来たと呼びに来たエミリーさんに抱きかかえられていた。
「……様! アルマ様っ! 大丈夫ですかっ!?」
「え? エミリーさん? それに……ウィル君も?」
「エミリーの悲鳴が聞こえてきたから、慌てて来たんだよ。一体、どうしたの?」
エミリーさんとウィル君が心配そうに覗き込んできて……うぅ。魔法の実験を夢中でし過ぎて魔力が尽きたとは言い難い。
とはいえ、二人に迷惑を掛けてしまったし、正直に言うしかない訳で。
「その、街の人たちへの魔物対策に、全力で取り組み過ぎまして……」
「アルマ様。またですか? 街の人たちの為に尽力するのは素晴らしいですが、ご自身の事も大切になさってください」
エミリーさんに注意されると、間髪入れずにウィル君が身を乗り出す。
「えっ!? また……ってどういう事!? エミリー。ボクが学校に行っている間、お姉ちゃんに何があったの!?」
ウィル君がエミリーさんの言葉に食いついて……つ、次から気を付けるから、許してーっ!
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