第24話 魔物避けの魔法

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第24話 魔物避けの魔法

「出来たー! 人体には影響がないけれど、魔物は忌避する香りを放出する草魔法と、その香りを拡散する風魔法を込めた、魔物避けの魔石!」  植物辞典から、幾つか候補となる植物を見つけ出し、それぞれの植物について調べ上げた。  更にその香りを草魔法で再現しつつ、魔石に込めて風魔法で拡散するようにしたので、あとは設置してその効果の確認するだけだ。  早速魔石を持って、研究所を出る。 「ちょっと森へ行ってきます」 「えっ!? だ、ダメですよっ! 騎士団が魔物を討伐したとはいえども、全ての魔物が居なくなった訳ではありませんし、何より森は魔物の巣窟ですよ!?」 「だからこそ、実証実験に最適じゃないですか。それに、魔物が現れても何とかしますし」 「ダメですっ! アルマ様に何かあったら、この街の……いえ、この国の損失ですっ!」  えぇ……ケヴィンさん。それは流石に大袈裟過ぎるんだけど。  結局、ケヴィンさんに食い下がられ、最近被害に遭ったという畑で実験をするという事で手を打つ事になった。  魔物がどれくらい嫌がるかを早く確認したかったのだけど、実際の使い方と同じ環境で実験出来るというもの、それはそれでアリなので、良しとしよう。  という訳で、ケヴィンさんの知り合いだという農家さんの所へ行き、魔物の被害にあった場所へ案内してもらった。 「こちらです。柵が破壊され、この辺りのポテトが掘り返されていたんです」  見ると、応急処置的になおされた柵があり、ポテト畑に所々大きな穴が空いている。  確かに魔物の被害に遭っているようだ。 「では、この畑の中心部に魔物避けの魔道具を設置させていただきますね」 「これは……設置された後はどうすれば良いのですか?」 「いえ、何もしなくて大丈夫です。私の魔法が込められていますので、この畑くらいの広さだと、これ一つでカバー出来ますから」 「凄い……あの、もし宜しければ、私の知り合いの農家も魔物の被害に困っていまして、設置いただけないでしょうか」 「えぇ、構いませんよ。ただ、まだ実験中ですので、あまり過信され過ぎないようにお願いしたいですが」  今回、実験用に小さめの魔石を十個用意している。  理想は、大きな魔石を街の中心部に置いて、それ一つで街とその周辺全てを覆って欲しいのだけど、拳大の魔石だと、それ程の魔力が込められないのよね。 「せ、聖女様っ! 聖女様の御力をお貸しいただけるなんて……ありがとうございますっ!」 「あはは。あの、私は聖女ではなくてですね、王都にイザベラという本物の聖女が……」 「いえ、見た事もない方よりも、我々にとっては魔物を駆除したり、子供の怪我を治してくださったアルマ様こそが真の聖女様なのです」  うーん。これは、後日トラヴィス王子に進言しておいた方が良いのかも。  イザベラに各街へ行ってもらって、聖女としてアピールしてもらわないと、何故か私が聖女と呼ばれてしまう。  ……もちろん、イザベラがこの街へ来ている間は、王都とかに戻って邪魔しないようにつもりだ。  それから、他にも街の壁の外側にある畑を紹介してもらい、最後に街の東西にある門へ魔石を設置する。 「聖女様。これで魔物が来なくなるんですか?」 「来なくなる訳ではないですが、来る頻度は減ると思います」 「っしゃあ! じゃあ、もう魔獣が来るかもしれないって恐怖に怯えなくて良いし、サボれるんですねっ!?」 「いえ、来なくなる訳ではないですし、そもそもお仕事をサボるのはダメですよ?」  魔獣避けの効果はあるけれど、全ての魔物に効く訳ではないだろうし、怪しい人とか悪い人は門番のサムさんに止めてもらわないといけないんだから。  それからお屋敷に戻ると、トラヴィス王子の贈って下さった装飾品などが、幾つかの魔石に変わっていた。  だけど、残念ながら大きな魔石はない。 「アルマよ。取り急ぎ、出入りの商人が店にあった魔石を持ってきてくれたのだ。あの装飾品で大きな魔石も購入しているが、仕入れに時間が掛かるから少し待って欲しいという事だ」 「わかりました。私も、まだ魔石の実験中ですので、急がなくても大丈夫です」  あの香りで魔物を避ける事は出来るし、人体にも影響はないけれど、人によっては草の香りを嫌う人もいるだろう。  それに、今十個魔石が増えたけど、それでも数に限りはある。  一つの魔石に含める草魔法の効力を減らして、代わりに風魔法の効力を増やせば、効果範囲は広がるが、効力を失っては本末転倒だし、いろいろと実験して草魔法と風魔法の配分を見極めたい。 「それから、アルマよ。トラヴィス王子から、正式に申し入れがあった。先方の指定日は十日後なのだが、時間が昼前なので、この屋敷で会食にしたいと思うが構わないか?」 「私は問題ありません。魔石のお礼も言いたいですし、お受けいたします」 「うむ、わかった。エミリーよ。すまぬが、王子を昼食にお招きする為の準備を頼む」  トラヴィス王子とは、何度かお茶はご一緒させていただいた事があるけれど、食事は初めてね。  闇魔法使いと疑われていないし、魔石の購入資金を援助してくれているし、今となっては断る理由がない。  あ、イザベラの聖女としての活動についても言っておかなきゃ。  それまでに、あの魔石で魔物が逃げるという確証が得られれば良いんだけどね。
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