第26話 トラヴィス王子との会食

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第26話 トラヴィス王子との会食

「アルマ嬢。久しぶりだね」 「ご無沙汰しております。トラヴィス王子様」  普段からきっちり仕事をしてくれているエミリーさんが、いつと以上に気合を入れて食堂の準備をしてくれた。  そして今、目の前にトラヴィス王子が座り、近衛騎士のカイル様が傍に控えている。  簡単に挨拶を済ませると、お爺様の言葉で会食が始まった。  アミューズから始まり、オードブルと続くけど、トラヴィス王子がずっと私から目を逸らさない。  ……はっ! そうか。王子は贈り物と称して、私に資金援助をしてくれているけど、本当に援助するに足る人物か見極めようとしているんだ!  テーブルマナー一つにしても、気を抜かないようにしなきゃ。  他愛無い話をしながら、お魚をいただいていると、トラヴィス王子が変な事を言い出した。 「ところでアルマ嬢。心は癒えただろうか。もしも、もう十分に癒えているのであれば、僕と一緒に王都へ戻らないか?」  心が癒えた?  何の話だろう。  ……あっ! もしかして、既にお爺様から魔物避けの魔石について聞いているの?  残念ながら、せっかく支援いただいたのに、満足出来る実験結果が得られておらず、心苦しい。 「トラヴィス王子様。この度は色々と便宜を図っていただき、誠にありがとうございます。ですが、もう少し時間がかかりそうでして……」 「いや、もちろん無理に連れて行こうという気はないんだ。アルマ嬢が気持ちが落ち着いたら、王都へ行こう」  王都へ……って、さっきも言っていたけど、どうしてだろう?  トラヴィス王子は時魔法と闇魔法が別物だと理解してくれたみたいだけど、それが世間一般に認知されているかと言えば別問題なのよね。  ……あー、わかった。王都にも魔物避けの魔石を置きたいって事ね。  だけど、それなら尚更実験をしっかり終えておかなければ。 「そうだ。贈った物はどうだろうか。アルマ嬢」 「はい。とても嬉しく思っています。ありがとうございます!」 「あぁ、天使みたいな笑顔を浮かべてくれるんだね。僕も贈った甲斐があるというものだよ。そうだ……今日もアルマ嬢に贈り物があるんだ。是非受け取って欲しい」 「トラヴィス王子様……ありがとうございますっ!」  こんなにも街の人の為に、資金を提供してくれるなんて。  王族として、正しい在り方だと思う。  今回も、贈っていただいた物を魔石などに変え、街の人たちの為に使わせてもらおう。 「そうだ。その……あ、アルマ嬢。僕の贈り物を喜んでくれているようだし、よければ街を案内してくれないだろうか」 「はい、喜んで! 私もトラヴィス王子様と一緒に街を回れるのは嬉しいです」 「おぉぉぉ……本当かい!?」  トラヴィス王子が物凄く嬉しそうに顔を輝かせている。  やっぱりご自身の資金援助によって、街がどのように変わったかを見られるのは嬉しいわよね。  それに、トラヴィス王子様とカイル様なら、これ以上ない護衛だし、森に行っても大丈夫だろうし。  やっと魔石の実験が進むわっ! 「あ、折角ですので、お爺様も一緒に参りましょう。ご案内したい所があるのです」 「ごはっ! ……あ、アルマよ。わ、ワシは街の事は良く知っているので、気にする事はないぞ。若い者だけで行ってくるが良い」 「お爺様? 大丈夫ですか!? お水を……」 「いや、アルマが普通にしてくれていれば、大丈夫だ」 「そう……ですか? じゃあ、若い者……ウィル君、一緒に行こーっ!」 「げはぁっ! あ、アルマっ!?」  何だろう。お爺様が何度もむせている。  気管に何か詰まったりしていなければ良いのだけれど。 「お姉ちゃん。じゃあ、僕も一緒に行くー!」 「ウィリアムよ。街の中は危険ではないし、トラヴィス王子様が居るから大丈夫だ」 「いえ、お爺様。この街はお姉ちゃん限定で、少し危ないんです。ですので、慣れているボクが一緒に行くべきかと」 「いや、しかしだな……」  ウィル君とお爺様が私たちとの同行について話しているけど、どうしてお爺様は顔が引きつっているのだろうか。  ひとまず、みんなで森へ行く事になったので、ドレスから普段着に着替えてきたんだけど、 「お姉ちゃんはボクが守ります」 「ウィリアム……空気。空気を読むのだ」  未だにウィル君とお爺様が何か話していた。
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