第30話 大騒ぎの王都

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第30話 大騒ぎの王都

「これは……どういう魔石でしょうか? 二つあるという事は、何か関連があるんですよね?」 「えぇ。この魔石は二つ揃って効果を発揮する魔石なの」  という訳で、クライヴ君に魔物避けの魔石について説明する。 「という訳で、これを王都とかで使えるようにして欲しいんだー」 「これは……凄い効力ですよ!? 国の防衛の考え方がびっくり返ります!」 「大袈裟だよー。全ての魔物に対応している訳ではなくて、この辺りに現れる魔物限定だし」 「いやいや、現れる魔物の種類を減らせるだけでも、効果が高いです。特定の魔物の対策をしなくて良くなるんですから」  例えば、たまにしか現れないけど、火魔法でしか倒せない魔物がいるとして、そいつが現れなくなれば、その対応の為に待機させている火魔法の使い手を、別の街の防衛に充てる事が出来るそうだ。  言われてみれば、確かにそうかも。  ただ、現時点で対応しているのは昆虫系と獣系と爬虫類だけなので、そんなに劇的な効果があるとは思えないけどね。 「わかりました。では、こちらの二種類の魔石をお預かりします」 「宜しくお願い致します」  この魔石を、この街の畑などには設置済みだという話も伝え、冷風の魔石と同じように、この街だけでなく、他の街でも使えるようにしてもらう。 「この魔石に関しては、個人向けというよりも、各地の領主向けに販売したいですね」 「そうね。こういった人々の安全を守るものは、領主や貴族の務めだもの」 「では、こちらも特殊な魔石を使った製品となりますので、領主様と相談の上で販売を進めていきますね」  ひとまず、今日やるべき事を終え、また研究所へ戻って次の魔石の活用について考えようと思っていると、クライヴ君がそう言えば……と口を開く。 「王宮御用達の商人をしている父から聞いたのですが、王宮が大変な事になっているそうですよ」 「王宮が? 何かあったのでしょうか?」 「それが……ですね。また聞きで申し訳ないのですが、第三王子のトラヴィス様が聖女様との婚約者破棄を宣言されたそうです」 「えぇっ!? と、トラヴィス王子様がっ!?」 「はい。ご婚約されていたのは、普通の貴族令嬢ではなく、聖女様ですからね。王族の婚約破棄だけで大事なのに、相手が相手なので、大騒ぎらしいです」  待って! トラヴィス王子の婚約者の聖女って……当然、イザベラの事でしょ!?  いきなり婚約破棄だなんて、どういう事なの!?  そんなのイザベラが……いえ、お父様だって承諾しないはず。  一体、何が起こっているの!? 「く、クライヴ君。それって、本当なの!?」 「えぇ。父から直接聞いておりますので」 「わ、私……ちょっと本人に直接聞いてくる!」 「えっ!? 直接って、トラヴィス王子様にですか!? 今は、国王陛下の怒りをかって、謹慎させられているとかで、おそらく会えないと思いますよ」  謹慎!?  いやでも、王族が聖女との婚約破棄を宣言したんだ。  謹慎処分でも優しいくらいだと思える。 「じゃあ王子じゃなくて、イザベ……聖女の方に。し、知り合いだから」 「それこそ、止めた方が良いかと。幾らアルマ師匠が知り合いとはいえ、婚約破棄を言い渡された直後です。むしろ、誰にも会いたくないのではないかと」 「そ、そういうものなのかな?」 「えぇ。その証拠に……というか、婚約破棄されたショックで聖女様が行方不明らしく、治癒魔法を使える者もいないので、王都の混乱に輪を掛けていると」  行方不明……まさか、ショックで身投げとか!?  ……ううん。イザベラはそんな事をするような子ではないと思う。  どちらかというと、どうやってトラヴィス王子様の心を取り戻すか……なんて事を考えているはず。  イザベラの居場所に心当たりはないけれど、そんな状態なら、一度お父様にお話をした方が良いのかも。 「クライヴ君。今の話、教えてくれてありがとう! いずれにせよ、一度王都へ行ってみるわ!」 「えぇっ!? アルマ師匠!?」 「魔石の事は、お願いね! それじゃあ!」  時魔法を使えば一瞬で王都の自室へ戻る事も出来るけど、お爺様に事付けだけはしておこうと思い、大急ぎで屋敷へ戻る事にした。
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