第34話 消えた魔道書

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第34話 消えた魔道書

「こちらです」  カイル様とスコットさんと共に、イザベラに教えてもらった古い倉庫の裏口へ。 「パスワード」 「……扉が開いた!? アルマ嬢、今の言葉はどういう意味なのでしょうか?」 「わかりません。ただイザベラから、教えてもらった言葉で、この言葉を発すると、扉が開く仕掛けなのです」  驚くカイル様とは対照的に、スコットさんは扉の周辺を調べている。 「これは……一体、誰がどうやって作ったのだろうか。非常に強力な結界です」 「結界……ですか?」 「えぇ。例え、この周辺が火事となり、火の海になったとしても、この扉の回りは破られる事がないでしょう。こんなに凄い結界は見た事がないし、先程の合言葉で開く扉というのも、聞いた事すらありません」  スコットさんはまだ扉を調べたいみたいだけど、先に目的の場所へ……と促し、地下へ降りていく。  そこには、私がずっと勉強していた書庫があり……私が持って行かなかった闇魔法の魔道書が残っている。 「こ、これは……闇魔法の魔道書!?」 「おそらく。私は、中を見ておりませんが、背表紙に書かれた内容からして、闇魔法の魔道書だと思っております」 「闇を生み出す魔法、影に移動する魔法、影を縛る魔法……そうですね。いずれも闇魔法だと言われている魔法です」 「どうして、家の地下にこのような魔道書があるのかはわかりませんが、代々この書庫を管理しているとお爺様から聞いております」  スコットさんに説明しながら、闇魔法の魔道書を眺め……明らかに数冊、書物がなくなっている場所を見つけた。  中身は読んでいないものの、どの本もタイトルだけは確認していたから、確かここには…… 「召喚魔法の魔道書がなくなっています!」  何とか、魔道書の書名を思い出した。  うん。間違いないはずだ。 「召喚魔法? 闇の住人……魔族を召喚して使役する魔法でしょうか?」 「詳しい事はわかりませんが、そういった書名だった気がします」  スコットさんと話をしていると、カイル様が何かを思い出されたようで、ハッと顔を上げる。 「魔族……ま、待ってくれ! 以前、イザベラが……アルマ嬢が魔族を使役して、トラヴィス王子を殺すところを見たと言ったんだ」 「えっ!? 私が……ですか!? トラヴィス王子を亡き者にしようだなんて考えた事すらありませんし、召喚魔法なんて使えませんが……」 「もちろん、それは分かっている。だから、その時は私も王子も相手にしなかったのだが……それをイザベラが現実にしようとしているのではないだろうか」 「ど、どうして!? 一体何が目的で……」  わからない。  一体、イザベラはどうしてそんな事をトラヴィス王子に話したのだろうか。 「これは、王族と側近……スコット殿のような宮廷魔道士の上役の者しか知らない事だが、トラヴィス王子は特殊な魔法を使える体質なんだ」 「特殊な魔法?」 「あぁ。強化魔法と呼ばれる、他者の身体能力や魔力を一時的に向上させる事が出来る魔法だ。無条件で、誰でも強化出来てしまう魔法で、対象者の能力を倍……いや、三倍に伸ばす事が出来る」 「す、凄い……」 「だから、国王様からも使用を禁じられていて、国が重大な危機に陥った時のみ使用を許されているんだ」  カイル様の仰る強化魔法は、使い方を間違えれば……使用する相手を間違えれば、国が滅んでしまう可能性すらある。  スコットさん曰く、トラヴィス王子が幼い頃に国王立ち合いの下で、強化魔法の実験を行い……実際、とてつもない威力の攻撃魔法が発動出来てしまったのだとか。 「おそらくイザベラは、先程の魔力を奪う魔法で王子の力を自分のものにしようとしているのではないだろうか。実際に出来るかどうかはわからないが」 「ですが、仮に強化魔法の力を得て、イザベラの魔力が数倍になったとして、あの子は何をするつもり……あっ! あの、世界が滅びるって……」 「もしかしたら、とんでもない事をやらかそうとしているのかもしれない! すみません。私は王子のところへ戻ります!」 「待ってください! 私も参ります!」  スコットさんは、騎士さんたちと共に我が家の……大量の骸骨をどうするか考えると言い、カイル様が大急ぎで馬へ。  私も乗せてもらって王宮へ行くと、トラヴィス王子の部屋へ。 「トラヴィス王子! 御無事ですか!?」 「ん? カイル? そんなに慌ててどうし……あ、アルマ嬢!? ど、どうして僕の部屋へ!?」 「トラヴィス王子様。部屋の真ん中へ! お命を狙われているかもしれません!」  ひとまず王子は無事だったけど、油断は出来ない。  カイル様と共に、警戒しながら王子へ経緯を説明し、少ししたところで……突然窓が吹き飛んだ!
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