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プロローグ
「えぇ!? 僕が卒業生講演に、ですか?」
恩師からの電話に僕は思わず聞き返した。
「そう。星並デザインの学祭兼OCで4名のプレゼンターに専門学校卒業後の進路について話してもらうアレな」
僕の名前は木之下 智紀。デザイン専門学校を卒業して、今は小さなWEBデザイン事務所でディレクターとして勤めている。
星並デザインはデザイン専門学校の中では並のレベルだけれども、毎年若干名は大手広告会社に就職するような輝ける才能を発掘している学校でもある。
僕がこの話を聞いて驚いたのは、大体この講演に呼ばれるのはその期生での首席ーー最高の成績を修めた者だけだったからだ。講演会は名だたる大企業の第一線で活躍する現役のデザイナーの話が聞けるということで、学祭の日に行われ、在校生は勿論高校生から地域の人々まで講演を聞きにくることがある。
「いや......その。木之下にしか頼めないことがあってだな。ーー悪いなぁ。これから会議に呼ばれているんだ。詳しいことは本人に説明しておいたから」
なんとなく歯切れの悪い恩師の声が気になったが、それ以上に僕は期待と興奮に打ち震えていた。
(まさか落ちこぼれだった僕が卒業生講演に呼ばれるなんて! 学生の心に届く講演をするぞ!)
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