VII

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「テーマは《専門学校 〜共に創る喜び〜》。教室を二部屋借りて、一つは事前に展示する。もう一つは来場者参加型にしようと思うんだ」  僕はホワイトボードに企画概要とラフを書いていく。聴衆は6人。大きな動物のオブジェが窓から顔を出す絵を描くと、御堂さんから歓声が上がった。 「二つの教室を跨る巨大オブジェ! さっすが木之下クン! 私をわかってるぅ〜!」 「どういたしまして」  次に教室全体を白いボードで包んで、落書き(ドゥードゥル)で埋め尽くす図を描く。 「これ、は!」 「有馬、学生の頃、教室中に落書きしたいって言ってたよな」 「今それをマジでやんのかよ.......」 「画力持った奴が馬鹿みたいなことが出来る、それが専門の良いところだろ」 「かっ、違いねェ」  僕は有馬と拳を合わせた。 「西条さんはキャラクターを使って来場者が参加しやすいようにポップな案内を作って欲しい。僕と黒須は案内用のwebサイト、ペラで作ろう」 「はい」 「はぁーい!」  西条さんと黒須は特に問題なさそうだ。 「そして教室に流す案内動画はーー田丸さんにお願いするよ」  僕は今日特別に呼んでいた田丸さんに声をかける。 「あの、私にそんな大役......」 「大丈夫。一緒につくろう」  有馬が突っ込んだ。 「いや、在校生使って良いンか?」 「先生の許可は貰ってる」  その辺りは抜かりない。 「今回、初めてのメンバーでの共同作業だけど、皆んなそれぞれの得意分野を活かしながら作っていきたいと思ったんだ」  挙手が上がった。 「はい、有馬」 「ってか、俺だけで教室全部落書きさせる気かァ? 出来るけど、きちーわ」  良い質問だ、と僕は返した。 「有馬、そのことで君にお願いがあるんだ」
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