IX

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IX

「わぁ......!」  学祭前日、僕達は完成した半分の教室を見て、感嘆の声をこぼした。  教室で勉強や遊び、雑談をする多彩な鹿馬のオブジェ達、そしてそれらを取り巻く黒い落書き(ドゥードゥル)。唯一無二の空間がそこには出来ていた。 「田丸さんの提案で、在校生が描いてるところを動画にしてWEBに公開したのも良かったよ」 「私、あんなに楽しそうに絵を描く皆、初めて見ました......!」  学生達にも好評だった展示物が、学祭でどう描き足されるのか楽しみだ。 「木之下クンって本当誰かの求めてるモノを出してくるの得意だよね。ーーほら、アレ見て」  “誰も何も描いていないと来場者も描いてくれないから”という理由で、西条さんと黒須がもう一つの教室にも落書き(ドゥードゥル)を描き始めていた。何か話しながら描いているらしく、横顔が煌めいていた。田丸さんも途中で合流していく。 「黒須のあんな顔初めて見る......。有馬、ありがとな。落書き(ドゥードゥル)の描き方教えてくれて」 「べっ、別に。大したことねェよ」  そう、僕は有馬から落書き(ドゥードゥル)を描くコツを聞き出して、メモにしていたのだ。初歩の初歩だけど、これさえあればどんな初心者でも描ける。 「ね、私達も一緒にやろうよ〜。私、木之下クンの落書き見てみたい」 「勝負だコラ」  まるで、学生時代に戻ったようだ。 「あぁ!」
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