XI

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XI

『次の発表者は、煌製作の西条......えっ? 失礼しました。ステラデザインの木之下さんです』 (どうしよう。カンペも何もないぞ)  僕は壇上に向かう階段で密かにため息をつく。先程、急いで係の人に説明をしたばかりだ。  当然、黒須に渡した原稿は使えないし、前の3人の発表は聞いていない。 (社会人になった僕は、学生達に何を届けられるだろうか)  マイクを調整するフリをしながら会場を見渡す。ざっと250人程度。パイプ椅子はほぼ満席だ。 (あぁ、そういえば。あのとき、言って欲しかった言葉があるなぁ)  僕は数年前、向こう側だったときのことを思い出した。 「僕はこの学校に来たとき、進路を間違えたと思いました」  ぎょっとした目で教師陣が僕を注視した。
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