XI

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「僕の代はレジェンドと呼ばれる実力派揃い。僕が入学して初めて自主的にやったことは、退学届の出し方を調べることでした」  会場が静まる。  僕は青くて切ない学生生活を振り返った。 「元々、進学系の高校にいた僕は、親の反対を押し切ってこの並デザに進学しました。この学校では入学してすぐに課題提出があります。自由に作品を作って良いと言われて、僕は驚愕したのです」  今でも思い出せる。入学した時点で有馬や御堂さん、それに他のメンバーは天才だった。人の目を奪う色遣い、構図、何もかもの基礎が出来ていて、授業を受ける度に技を磨いていていた。 「僕は余りにも凡人でした」  才能がないことをどんなに悔んだかわからない。 「それでも、この並デザで学んだことを活かして、デザイン会社に勤めることが出来ました。僕のような落ちこぼれでも、先生方がデザインの楽しさや魅力を根気よく教えてくれたからです。だから、皆さんに伝えたいです。”デザインは楽しい。大丈夫だ、目の前のことに一生懸命でいればなんとかなる”って」 (うわ、ぐちゃぐちゃになってしまった)  マイクを置こうとすると、ゲスト席から2人が立ち上がった。 (有馬......に御堂さん?)
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