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I
5階建の古びた校舎を見上げると、ここでの2年間が自然と思い出された。疎らに帰っていく学生達と入れ違いに校舎に踏み出す。僕達は終業後に打ち合わせと称して母校に呼び出されていた。
「3年ぶり、か」
「わー! 帰ってきた感じあります!」
(黒須は数ヶ月ぶりだから感慨なさそうだなぁ)
まさか自分の講演のためでなく、講演する後輩の補佐の為に舞い戻ることになるとは。
(何が悲しくてこんな惨めな役を)
「折角だから授業中に来たかったです! 背後から驚かせたり、学生に混ざったりーー」
「やめなさい」
この後輩、黒須はちょっとした問題児なのである。
《君には後輩のお目付け役を頼みたいんだ。よろしく》
恩師からの僕にしか頼めないことというのは大体このような内容であった。
(断れない僕も僕だけど)
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