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*  下駄箱の近くまで進むと、2人の社会人を見かけた。僕の知っている人達だ。 「えぇー!? 木之下君!? 超おひさ!!」 「チッ、誰かと思ったら」 「久しぶり、御堂さん。......有馬」  これは僕の同期でW首席だった御堂さんと有馬だ。御堂さんは黒髪ロングの清楚系の女性。有馬は金髪のヤンキーみたいな男だった。 「元気だった?」 「お前まだこの業界に居たんだ」 「あ、あぁ、うん」  僕が歯切れの悪い返事をしていると、黒須が割って入ってきた。 「えぇ!? もしかして有名な御堂さんと有馬さん!? どちらに就職されたんですか?」  2人は黒須に名刺を差し出すと、なんでもないことのように企業名を名乗った。 「通」 「博堂かな!」  それはこの国でも名だたる広告代理店だ。 「すご〜い! 流石はレジェンドの代!」 「そういえば、私木之下君の就職先知らな〜い!」 「進路決まるのが一番遅かったンだろ」 「あ、えっと。僕は小さなデザイン会社だよ」  僕はーー名刺を出せなかった。
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