第七章

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 この国の裁判の流れはいたってシンプルだ。裁判官が容疑者に質問し、容疑者が騎士団によって移送された人物に間違いないかどうかを確かめる。そのあと、どうして移送されたかを確認し、審判の対象を明確にしておく。  そのあと、騎士団の人間が容疑者の罪をつらつらと説明し、罪に対する刑を請求する。  それに対して関係者は反論、もしくは情状酌量を訴え、請求された刑をできるだけ軽くしようと努める。もちろん、その逆の考えの者もいる。  そういった内容から、裁判官が最終的に刑を決め、法廷でのやりとりは終わる。  今回の場合、騎士団の人間は間違いなく極刑を望んでくるから、それをいかにして軽くするかが焦点となる。  たいていは容疑者と被害者は敵対するような関係であることが多く、裁判はわかりやすくすすむのだが、今回はどちらも大聖堂側の人間で、カリノはラクリーアを憎んでいたわけでもない。  動機が不明というなかですすめる裁判も、裁判官としては気が気ではないだろう。  それでも相手はシリウル公爵。同情する者には温情を示すものの、嘘は鋭く見抜き、そういった者には容赦はない。
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