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イアンは「見送れなくて申し訳ありません」とやわらかく声をかけてくれたが、彼の机の上にこんもりと山積みにされた書類を見れば、納得できるものがあった。
ナシオンと並んで帰路につく。
今日の目的はすべて果たした。何よりも、例の短剣を見つけたのは大きいだろう。
早くカリノに伝えたいという気持ちすら生まれてくる。
「フィアナ」
突然ナシオンに名を呼ばれ、フィアナはおもむろに彼を見上げる。
「あんまり突っ走るなよ」
その言葉が、フィアナの心にずしっとのしかかった。
**~*~*~**
カリノが他の巫女たちと一緒に洗濯物を干していると、どこか騒がしい。
「どうしたのかしら?」
一人の巫女が言った。
洗い立てのシーツを手にしつつも、何が起こっているのかさっぱりとわからないカリノは「さぁ?」と首を傾げる。
洗濯ロープにすべての洗濯物を干してから、カリノも他の巫女も、騒ぎの原因が気になって声がする方向へと足を向けた。
「あっ……アルテール王太子殿下よ?」
誰かがそう呟いたことで、王太子が大聖堂を訪れたということだけは理解した。
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