第五章

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 ラクリーアの姿を目にしたアルテールは、すっと彼女の前に進み出て、そこでおもむろに跪く。  洗練されたその動きに、カリノも思わず目を奪われた。  アルテールはラクリーアの左手をとった。 「聖女ラクリーア。どうか、私、アルテール・ファーデンと結婚していただけないだろうか?」  その言葉で大聖堂内はシンと静まり返った。こそこそと話をしていた巫女たちも、一斉に口をつぐむ。  ファーデン国の王太子アルテールが、聖女ラクリーアに求婚した。  だが、今まで聖女が王族と結ばれた過去はない。  すうっとラクリーアが息を吸うのが感じられた。 「お断りいたします。わたくしは大聖堂に身を置く者。あなた様と共に生きる道はございません」  せん、せん、せん……と、ラクリーアの声は静かな室内に反響する。  一瞬だけ驚きの表情を見せたアルテールは「なるほど」と口角をあげた。それからゆるりと立ち上がり、威圧的にラクリーアを見下ろすものの、ラクリーアに怯む様子はなかった。 「わたしの誠意が伝わらないとは残念です。今までは王族と大聖堂と別れておりましたが、昔は一つだったのではありませんか?」
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