第六章

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「朝会で嬢ちゃんのことが報告される。だから俺のほうから、移送の手続きはお前にやらせるように伝える。それでいいな?」 「はい。ありがとうございます」  移送前にカリノと話ができる機会があるのは大きい。  これもタミオスのおかげなのだが、彼も騎士団では上層部に片足を突っ込んでいる人間であるのに、その考えに染められていないところは、やはり情報部という特殊な部門に属しているからかもしれない。  カリノには何をどこまで、どうやって伝えるべきか。  アルテールの短剣が見つかったことは言うべきか否か。  なにしろ、第一騎士団にも報告していない証拠品だ。これは、ここぞというときの切り札にしておきたい。  たとえそれが、証拠隠蔽だと言われようが。  タミオスが言ったように、カリノを王城へ移送させるという話は、朝会で報告された。  それが終われば、この捜査本部も解散となるだろう。カリノの移送が終わった今日の夕方には「解散」の号令がかかるはずだ。  凶器が見つからない、動機がわからない、聖女の遺体の一部が見つからない。
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