第六章

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 そうやってないないづくしであっても、犯人さえ王城へと送ってしまえば、あとは王城にいる彼らが処遇を決める。つまり、騎士団の管轄からは外れるというわけだ。 「では、容疑者移送補佐はフィアナ・フラシス、頼んだぞ」  総帥に名を呼ばれ、フィアナも「はい」と凛とした声で答える。  タミオスの根回しにより、フィアナはカリノの移送補佐として指名された。  それに不満そうなのはナシオンだった。 「今日はフィアナだけだ」  朝会が終わり、それぞれが持ち場へ戻ろうとしたとき、そんなナシオンの肩をタミオスがポンと叩いた。 「いやいや。二人一組が基本ですよね?」 「それは捜査のときな? 今日は取り調べで嬢ちゃんのところにいくわけではないからな?」 「ナシオンさんも、ずいぶんとカリノさんのことが気に入ったようですね」  とにかくナシオンはぶうぶうと文句を垂れていた。そんなに彼もカリノと話をしたかったのだろうか。  自席に戻り、今回の事件のあらましをまとめた報告書に最初から目をとおす。  カリノが聖女ラクリーアの頭部を持って東分所を訪れたのは、六日前。そのときから、聖女を殺したのは自分自身だと言っていた。
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