第六章

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 そのわりには凶器についても証言しないし、ラクリーアの身体を刻んだ理由も言わない。  殺したかったから。そうしたかったから。  そういった表向きの言葉を並び立てるだけ。  だけどそれが、アルテールをかばっての言動だったら?  そして彼女が、アルテールに脅されているとしたら?  十分に考えられる。  それにナシオンも言っていたように、大聖堂にいる巫女や聖騎士見習いは後ろ盾のない弱い人間だ。その彼らを人質のように扱われたら、幼いカリノは逆らえないだろう。  もしかして、キアロが姿を消したのはアルテールに囚われているから、とか。  できれば、その辺の話をカリノから聞いてみたい。  ナシオンもいないだろうし、見張りも外にいるだろうから、こっそりと聞けば答えてくれるだろうか。  そんなことを考えながら、いつもの取り調べ室へと足を向けた。 「こんにちは、騎士様」 「こんにちは、カリノさん」 「今日は、騎士様、おひとりなんですか? いつもの方はどうされたのですか? クビになったのですか?」  カリノはナシオンをきちんと認識していたようだ。
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