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カリノがひゅっと息を呑んだ。
「カリノさん。脅されているのではないですか? たまたまそこに居合わせ、それを目撃してしまったために、犯人にされているわけではないのですか?」
かさかさに乾いているカリノの唇は、小刻みに揺れている。
「わたし……わたし……」
少女の眦に涙が浮かぶ。
言葉を紡ぎ出そうと、心を奮い立たせている様子が伝わってきた。
「カリノさん……ここには、私しかおりません。カリノさんから本当のことを聞くために、彼もおいてきました」
はっとカリノは大きく目を見開いてから、つつっと一筋の涙をこぼす。
「わたし、聖女様を殺していません……」
かすれたような声でカリノがつぶやいた。
だけどフィアナは、ずっとその言葉を聞きたかったのだ。
「わかりました。私たちはカリノさんを信じます。すべては裁判で決着をつけましょう」
カリノがこくりと頷いた。そしてきょろきょろと周囲を見回し、声を低くする。その顔は、先ほど涙を流した少女とは思えないほど、凛々しいものだ。
「騎士様は、わたしの言うことを信じてくださるのですか?」
「それが真実であるならば、信じます」
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