44人が本棚に入れています
本棚に追加
カリノの青い目が不安そうに揺れている。
「わたし……」
「ゆっくりでいいです。あの日、何があったのか。教えていただけますか?」
フィアナの言葉にカリノは大きく頷いた。
ぽつりぽつりとカリノが話し始める。それはもちろん、フィアナも初めて耳にすることだった。
カリノは満月の夜になると自室を抜け出して、あの川辺へと足を向けていた。そこで聖女ラクリーアと聖騎士キアロと顔を合わせ、他愛もない話をして、寂しさを紛らわせていた。
「ラクリーア様と出会ったのは、たまたまなのです。それからなんとなく、満月の夜に外へ出るようになりました。特に約束をしたわけでもないのですが……」
「キアロさんも、その場にはいたのですか?」
「はい。お兄ちゃんを誘ったのはわたしです」
ここでカリノの素顔を見たような気がした。今まで「兄」と口にしていたキアロを「お兄ちゃん」と言った。できることなら、ここでキアロの情報も手に入れておきたい。
「キアロさんは、聖女様の専属騎士にという話もあったようですね?」
「……はい」
「ですが、それは叶わなかったと」
「はい。ラクリーア様が反対されたのです……」
最初のコメントを投稿しよう!