第六章

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 ぼそぼそと喋っているカリノは、背中を丸めた。下を向いてテーブルの上の一点を見つめているため、どのような表情なのかをうかがうことはできない。 「聖女様が? 枢機卿たちが年齢を理由に反対されたと聞きましたが……」 「それは、表向きの理由です……騎士様は、聖騎士のイアン様とお会いしたことがありますか?」 「はい。今回の件について、協力いただいております」  それでもカリノは顔をあげず、小刻みに身体を揺らしている。 「……騎士様は、イアン様とお会いになられて、どう思いましたか?」  どう、と言われても、綺麗な男性だという印象だ。そもそも聖騎士と呼ばれる彼らは、王国騎士団に所属する騎士らと別の生き物ではないかと思えてしまうほど、線の細い男性が多い。 「そうですね。こちらの騎士団の彼らとは異なりますね。中性的といいますか、綺麗な方ですよね」  そこでカリノがはっと顔をあげる。 「そのような男性が聖騎士となるのも事実ですが、イアン様は、他の聖騎士よりも群を抜いて綺麗な方だと思いませんか?」  フィアナを真っ直ぐに見つめるカリノの瞳は、力強く燃えていた。何かを決心したかのようにも見える。
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