第六章

15/24
前へ
/171ページ
次へ
 大聖堂の巫女から話を聞くこと。カリノから話を聞くこと。その裏付けをとるために、イアンから話を聞いたこと。そこから、ラクリーアの護衛の話には発展しなかったのだ。  きっと専属護衛本人から、第一騎士団の騎士が話を聞いているものと思いたい。 「カリノさん。あの日、何を見たのか、教えてもらえますか?」  フィアナの言葉でぱっと顔をあげたカリノだが、かすかに唇を震わせてから、また下を向く。 「あの日は、満月ではありませんでしたよね?」  むしろ新月だ。月明かりのない暗闇の中、どうやって聖女ラクリーアを殺して切り刻んだのか。そこに、王太子アルテールが絡んでいるというのであれば、今のうちに確認しておきたい。 「たまたまです。眠れなくて、それで外に出ました」 「いつもと違って周囲もよく見えなかったのではないですか? 明かりは手にしなかったのですか?」 「はい。明かりを持つと、ほかの人に知られてしまいますから。こっそりと抜け出すときは、いつも明かりを準備しません。それに、新月だといっても星の明かりはありますし、少し過ぎれば目も慣れますから」  カリノの年齢であれば、暗闇への順応も早いのだろう。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加