第六章

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「なんとなくですが。騎士様も、胸騒ぎするといいますか。そういうときってありませんか?」  フィアナにも心当たりはある。第六感というのか、何かが働いて嫌な予感がするとき。それのおかげでフィアナが気づき、命拾いした者もいるくらいだ。 「その日はそんな感じがしたのです。眠れないというのもありましたが。それに、いつものように慣れた道というのもあったので、暗闇はさほど気になりませんでした」  フィアナも川沿いを歩いてみたが、慣れない者にとっては非常に歩きにくい場所だった。まして暗闇でとなれば、転んでもおかしくはない。  カリノにとっては定期的に訪れていた場所だから、勝手がわかっているのだろう。 「ですがあの日は、いつもと違いました。誰もいないだろうと思っていたあの場所で、男女の言い争いが聞こえました」 「その声は、大きな声でしたか?」 「いえ。本当に近づかないと聞こえないような、ボソボソとした声で、何をしゃべっているのかはわかりませんでした。ただ、遠くからでも二人の人間が向かい合っているのだけはわかって……だけど、そのうち……」  カリノはその瞬間を遠くから見ていたのかもしれない。
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