第六章

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「だから、わたしも慌ててそこへ行くと、女の人が倒れていて、それがラクリーア様でした……」 「そこに、アルテール王太子殿下の姿もあったのですね?」  カリノが小さく頷くと、無造作に結ばれている髪も小刻みに揺れる。  ただフィアナもなんとなく今の話にひっかかりを覚えたものの、それがなんなのかはわからなかった。 「アルテール王太子殿下が、短刀でラクリーア様を、こうやって……」  カリノはお腹のまで両手で短刀を構える姿勢をとった。 「あのお方が聖女様のどこを刺したのか、わかりますか?」  これ以上、フィアナの口からアルテールの名を出すのはまずいだろう。言い方を濁す。  カリノは、首を横に振った。 「驚いて声をあげたら、アルテール王太子殿下に気づかれてしまって」  そこからはフィアナが予想していたとおりの内容が、カリノの口から飛び出してきた。  たまたまその場にいたことで、アルテールに脅され、犯人として自首しろと言われたこと。  致命傷を誤魔化しアルテールの痕跡を消すために、ラクリーアの死体を切り刻んだこと。
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