第六章

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 ただ、そうやって指示を出したアルテールはある程度見届けたものの、慌てて逃げ出していったため、短剣を落としたことにすら気づかなかったようだ。だからそれをカリノが人の目から隠すように土の中に埋めたとのこと。  これは何かあったときに、逆にカリノがアルテールを脅すための切り札としてとっておいたのだろう。 「なるほど。その切り札がこうやって役に立つときがきましたね」 「はい。騎士様ならそれを見つけてくださるだろうと思いましたし、それを隠すこともせずに、わたしが望むようにしてくれるのではないかと、そんな期待を込めました」 「もし、私がアレをもみ消したら、どうされるおつもりですか?」 「そのときは、ラクリーア様のお側にいくだけです」  カリノが満足そうに微笑んだ。もう、後悔はない。やり残したことはない。  まるで、そう言うかのように。 「カリノさん。再度の確認ですが、聖女様の身体をめちゃくちゃにしたのは、あの方の指示で間違いないのですね?」  その言葉に、彼女はゆっくりと首を縦に振る。 「……はい。ラクリーア様の身体に、アルテール王太子殿下の痕跡が残るようなことはあってはならないと……」
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