第六章

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「すべて、あの方の指示なのですね? 首を切断したのも?」 「そのほうが、みな、驚くだろうって。衝撃を与えるだろうって」  東分所で対応した騎士らにとっては衝撃だったろう。今でも若手の騎士のアロンは、部屋に閉じこもっていると聞いている。 「だから、大聖堂に戻って、いつも薪割りに使っている斧を持ってきました。首を切断したのはアルテール殿下です」 「それから、あのお方は……」 「逃げていきました」  これで話はつながった。  だが、この内容を明らかにするのは今ではない。  ここで騎士団に報告したとしても、すべてはもみ消されてしまう。なによりも王太子アルテールがかかわっているからだ。 「カリノさん。言いにくいことなのに、教えてくださってありがとうございます」 「今日は、あの人がいなかったから……」  あの人。ナシオンのことにちがいない。 「わたし、あまり男の人が得意ではありません。ごめんなさい」  それは、大聖堂で会った他の巫女らも同様だった。 「こちらこそ配慮不足で申し訳ありませんでした。あの人は、私の相棒なので」 「相棒? それは騎士様と恋人同士ってことですか?」
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