第六章

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 キアロについては先ほど、曖昧に終わってしまった。ここまで話を聞いたのだから、キアロについてもはっきりとさせておきたかった。 「あの方に人質にとられているとか、そういったことはありませんか?」  ふるふると、カリノは勢いよく首を横に振った。 「それは、ありません。ですが、わたしもお兄ちゃんがどこにいるかはわかりません。ドランの聖堂に派遣される話は聞いていました。ですが、ドランにいないとなれば、わかりません」  それはカリノの心からの言葉なのだろう。  そのあと、彼女の心を落ち着けるかのように他愛のない話をしてから、フィアナは取り調べ室を出た。入り口に立っていた女性騎士に目配せをする。それはもちろん「終わった」という合図だ。  フィアナがカリノにしてやれることは、今はもう、何もない。  いや、移送された先の王城の地下牢での待遇を改善してもらうように、お願いすることだけはできるかもしれない。 **~*~*~**  ざわざわと胸騒ぎがした。これはあのとき、両親を失った夜に似ている。  毛布にくるまって何度も寝返りを打ちつつも、眠れなかったあの日。
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