第六章

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 だけど、カリノは生きている。生きているからお腹は空くし、眠くなる。  キアロの手をしっかりと握りしめ、食べられそうなものを捜し歩く。 『……あっ』  真っ白いローブを羽織っている女性が、こちらに向かって歩いてきた。後ろには、白い騎士服を着ている騎士たち。  彼女は途方に暮れている人たちに向かって声をかけ、食べ物を分け、希望を与えていた。  その彼女がラクリーアだったのだ。 (ラクリーア様……?)  同室のメッサがすやすやと寝息を立てているのを確認してから、カリノはそろりと部屋を出た。  部屋と部屋をつなぐ通路は、もちろん真っ暗だ。だけど、それもしばらくすればうっすらと見えるようになるのを知っている。  心の中で十数えれば、どこに何があるのかを把握できるようになるのだ。  いつものように足音を立てずに、素早く歩く。建物から出てしまえば、少しは緊張も解けた。  外は、いつもより暗く感じた。今日は新月だった。星の光は小さく地上に降り注ぐ。  それでも足元や少し先が見えるほど明るい。  慣れた道、いつも使っている道。
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