第六章

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 それから秘密の抜け穴をくぐって、敷地外へと出る。川を流れる水の音が次第に大きく聞こえるようになってきたのは、それだけ川に近づいてきた証拠でもある。  ここからもっと川辺に向かえば、いつもラクリーアとキアロと座って話をしている場所に着く。  ボソボソと人の声が聞こえた。  こんな時間、こんな場所に誰がいるというのか。  できるだけ足音を立てないように、ゆっくりと彼らに近づく。なぜか、その彼らが気になった。  ぼんやりとだが、その人物が誰であるかを確認できる距離まで近づいたとき、一人の身体が大きく傾いて崩れ落ちていく。 (何……? どうしたの?)  一人は倒れ、一人はそれを見下ろしていた。  だが、なぜその者が倒れなければならないのか。その原因をカリノはしっかりと見てしまった。 「お兄ちゃん……?」  カリノの言葉に、立っている人物が、身体を大きく震わせた。  驚いたようにカリノに視線を向けたその者の手の中には、血で汚れた短刀が握られていた。
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