第七章

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 立法権が国王にしかないファーデン国において、その権利を貴族にも持たせるべきだと主張する一派がいる。そしてもちろん、権力が貴族に集中しないように、現状のままでよいと考える一派もいる。前者は改革派と呼ばれ、それに対して後者は穏健派と呼ばれる。  明らかにそれらに属しているとわかる者が裁判官になるのはふさわしくないことから、たいていはどちらにも属さない中立派の人間が選ばれるのだが、今回は容疑者も被害者も大聖堂の人間ということもあるため、地位あるシリウル公爵が選ばれたのだ。  フィアナもシリウル公爵のことはよく知っており、信頼のおける人物だ。彼なら公正な判断をしてくれるだろう。  たいてい裁判は、貴族間の争いで開かれることが多く、今回のように容疑者、被害者が揃うような裁判が開かれるのは何年ぶりかわからない。  それだけ事件が起こらない平和な国なのではなく、事件はそれなりに起こるものの、裁判に発展しないようにもみ消されているだけだということを、フィアナは知っている。
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