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証言台に立つカリノを、年配のシリウル公爵が法壇から穏やかな視線で見つめていた。
この法廷内には、大聖堂側の関係者と裁判の行方を見守る高位貴族、そして国王と王太子の姿もあった。
もちろん、この事件を捜査した騎士団関係者の姿も見える。フィアナもよく知っている騎士団総帥と、捜査本部を取り仕切った本部長。それから第一騎士団から団長、副団長、他数名。
なによりも聖女ラクリーアは、巡礼の途中の不慮の事故で亡くなったのだ。だから事実を知る者は必要最小限にしたい。その必要最小限とされる面々だった。
「ファデル大聖堂の巫女カリノ。あなたは聖女ラクリーアを殺害しその死体を損壊した。その理由であなたはここにいます」
朗々としたシリウル公爵の声が、法廷内へと響く。
カリノはまっすぐにシリウル公爵を見つめたまま、何も言わない。
「言いたくないことは言わなくても問題ありません。ですが、事実と異なることがあるのならば、はっきりと陳述するように」
「……はい」
裁判はシリウル公爵によって進行される。
「では、カリノさん。本件について何か言いたいことは?」
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