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法廷内はしんと静まり返り、誰もがカリノの言葉を待っているように見えた。
フィアナは、騎士団の人間でありながらもカリノについて証言するため、大聖堂側の人間と共に座っていた。だからフィアナが前を見れば、騎士団総帥たちの顔がある。その顔は「なぜお前はそこにいる」と言っているように見えた。
この場にはナシオンやタミオスの姿はない。つまり騎士団の人間でフィアナの味方になってくれるような者はいないのだ。
「……わたし」
小さな身体が凛とした声色を発する。
「聖女ラクリーア様を殺していません」
どよどよとざわめきが生まれる。
「静粛に」
カツーンと木槌の音が響き、また静まり返る。
フィアナは傍聴席に座るアルテールにチラリと視線を向けた。彼は唇をまっすぐに結んで、カリノの後ろ姿を睨みつけている。
「カリノさん。それはどういう意味ですか?」
「言葉のとおりです。わたしは聖女様を殺していません。ただ、聖女様の首を切断したことだけは認めます」
またざわざわと傍聴席がどよめいた。
「つまり、聖女ラクリーアを殺した犯人は別にいるわけですね?」
「はい」
「あなたは、その犯人を知っていますか?」
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