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デニスもアロンと同じ考えだったようで、ゆっくりと頷く。
「誰だ? 何か、あったのか?」
アロンが影に向かって声をかける。
ふるっと震えた影は、ゆっくりと中に進んできた。
「……あっ。女の子? 人さらいにでもあったのか? それとも野犬に襲われたのか?」
アロンがそう声をかけたのも無理もない。
こんな朝早くから分所を訪れたのは、年端もいかぬような少女だった。身につけている衣類から判断すると、大聖堂で巫女として神に仕えている娘だろう。しかし、その少女の顔は血にまみれていた。
いや、顔だけではない。身にまとう服も、そこから伸びる手足も、血まみれだった。
だから人さらいから逃げてきたのか、それとも野犬に襲われたのかと、アロンは考えたのだ。
それと同時に矛盾も感じていた。大聖堂の巫女が、なぜ血を浴びなければならないのか。
大聖堂内に人さらいが現れたのか。それとも野犬が現れたのか。そうであったとしたら、それはそれで大事件だ。
さらに、少女が両手で大きな荷物を抱えているのが気になった。その荷物も血に濡れている。
「何があったんだ?」
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