第八章

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 十数年前には、グラニト国では幼い女児が行方不明になる事件が起こっておりました。そうですね、十歳までの女児が狙われているようでした。  わたくしも、両親からはけして一人で外を出歩かないようにと、しつこく言われておりました。  ですが彼らは、城の中にまで潜り込んでいたのです。  両親も使用人も誰もが寝静まった夜。わたくしは使用人に扮した彼らに、連れ去られました。  そして連れてこられたのが、この大聖堂です。  当時のわたくしは……そうですね、カリノがここに来たときと同じ八歳の頃。  他にも、わたくしと同じように連れ去られた子がいたので、彼女たちと励まし合って生活をしておりました。  教皇や枢機卿たちの言うことさえ聞けば、普通に生活ができておりましたので。  そうやって五年ほど、過ごしたでしょうか。  ちょうど十三歳になる年、当時の聖女様が特別なお菓子は食べないようにと、わたくしたちに言ったのです。そのときはなんのことかさっぱりわかりませんでした。  大聖堂では、二か月に一度、誕生日会が行われますよね。  そこでは、誕生日を迎えた者には、特別なお菓子が振る舞われるのを知っていますね?
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