プロローグ

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 アロンはおもわず喉をゴクリと鳴らした。やはり、大聖堂で大きな事件があったのだろうか。となれば、すぐに本部に連絡をし、大聖堂に他の騎士を向かわせなければならない。いや、あそこには聖職者たちの警護をする聖騎士がいるはず。彼らはいったい何をしているのだろうか。  そんな考えが、アロンの頭の中を駆け抜けていった。  少女は泣きもしない。わめきもしない。怯えもしない。このような状態で静かに口を開く彼女が、少しだけ怖いと感じた。 「騎士様。わたし、聖女様を殺してしまいました……」  その声もまだ幼い。だというのに、不気味な言葉を言い放った。 「聖女様を殺した?」  言葉の意味はわかるが、それを理解するのを本能が拒む。デニスを見やると、彼は眉間に深くしわを刻み、少女が抱えている荷物に鋭い視線を向けた。 「はい。わたしが聖女様を殺しました」  彼女は膝をつくと、手にしていた荷物を床においた。布地で包んであった荷物だが、それをゆっくりと開いていく。 「……ひっ」  そこから現れたのは、女性の頭部。白銀の髪は長くそれもまた血で汚れており、何色かわからぬその目はしっかりと閉じている。
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