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「どう、大丈夫?」
ライムちゃんに取り込まれた段階でヘカティアちゃんは既に白旗を上げていたので直ぐに救出してあげた。
「あぁ、スライムに取り込まれた時は、もっとベトベトするのかなと思っていたんだが、案外サラサラしていて驚いたよ」
「でしょ?! 私も出会った時にそう思ってた。ライムちゃんって本当に不思議な体質なの!!」
「『消える技を使用するのはシイナだけ』『スライムはベトベトしているだろう』無意識のうちに先入観に縛られていた事が僕の敗因のようだ」
「楽しかったね」
「あぁ。目立ちすぎるくらい、シイナが最前線で動いていたのも、僕にスライムの存在を悟られない為なんだろ。そして、渓流で姿を消し注意を引き付け、敢えて再度現れる事で僕の視界を君に釘付けにした。全ては仲間のスライムにラストアタックを成功させる為の布石……だったんだね」
「えへへ~。だって、私が攻撃しても勝てないからね~」
ヘカティアちゃんは残念がると、私達の種族を元に戻した。
「約束通り、僕はこの廃屋敷から出ることにするよ」
「勿論よ、後、あんたの部下に『ファナ様を驚かせないように』と命じときなさい」
「ははは、善処するよ。さて、シイナの願いは何かな。……僕を殺すかい?」
眼を閉じて全てを受け入れようとしていたヘカティアちゃん。そんな彼女を私は前からギュッと抱きしめた。
予想外の事だったようでヘカティアちゃんが慌て出す。
「……ぼ、僕を直ぐには殺さないのかい? 身体を玩びつつ拷問を与えながら殺されるのは、ちょっと困るのだが」
「あんた、さっきから何言ってるのよ。シイナがターゲットにした対象物を『殺す』ことなんてあり得ないわよ?」
「冗談だろ? 僕は種族の頂点だよ。僕を殺せば君達に多くの経験値や称号だって一度に得れる絶好の機会。種族序列最下位クラスの人間の地位も少しは上げられる事間違いなしさ。なのに何故……」
この世界には種別を並べた序列があるらしいが私にはくだらない情報だった。ファナちゃんの言うとおり、私がヘカティアちゃんを殺める事も無ければ、拷問する気も更々ない。
私が彼女を抱きしめている理由は1つ……
「じゃあ約束どおり、ヘカティアちゃんをくんかくんかしていい?」
「僕の首を取らずに、本当に癖を選択するとは。嗅がれる行為には慣れてないが、シイナの為なら喜んでこの身を捧げる事にするよ」
「人類がゴースト族に勝った褒美が、ヘカティアの匂いだけ……とは。人類が皆変態だと思われたら心外だわ」
こうして、ゴースト王女ヘカティアちゃんとの時間潰しごっこは無事に終了し、彼女の匂いは無事に収穫することに成功した。
レベルアップを告げる音が鳴り止まなかったが、私にはそんな事はどうでも良かった。サイレントモード、もしくはバイブ機能があれば設定変更したいくらいだ。いつかヘルメス君にあったら設定変更について問い合わせてみよう。
今は私は忙しいのだ。嗅ぐために無防備に立ってくれているヘカティアちゃんを嗅ぎ散らかすのに夢中なのだ。いくら際どいところを嗅ごうとも、嫌がるが抵抗することなくしたがってくれている。
クランベリーのような愛らしく、そして仄かに甘い彼女の香りに私はただただ酔いしれた。
そして、時折ファナちゃんやヘカティアちゃんと目が合うのだが、変態を見ているかのような冷たい視線をこちらに向けていた。
何故だっ!!
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