ワダ先生のお手紙講座

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 とはいえ本業の筆耕も、もちろん怠りません。何しろこの夢のような環境の前提がそれですので。お気に入りの筆と文鎮も机に置いた。 「筆耕」というのは、結婚式の招待状や式場のネームプレートなどなど、ホテルで扱う文字全般を書き起こす仕事のことである。得意の書が生かせる、そして人里離れた地で何の邪魔も入らずやりたいことができる。ここトアルホテルの求人は、まさに私が求めていたものだったのだ。  仕事内容は、言ってみれば文字を書くだけ。招待状の文面など、誤字脱字、表現の誤りの校正もあるが、そんなに難しいことはない。住み込みで常駐ではあるが、ほぼほぼ昼間に全部終わらせることができる程度の仕事量だ。  ていうか自分で言うのもなんだが、書くことなんて私には呼吸することと同じくらいたやすいことなのだ。前のホテルではどんな大きな宴会でも平気の平左だった。だから、同僚たちがぐちぐち文句を言っている意味が全然分からなかった。ちゃんと正確に書くだけ、文面をていねいに整えるだけ。何でそれくらいのことができないの?
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