2.ユイト

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 なんだ?どうかしたのだろうか?  クラスメイトたちが訝しげな顔をし出した時だ。 「っ、イテェ……足、挫いたかも」  はあ?と誰しもが首を捻った。だってあのレオだぜ?たかだか突き飛ばされたくらいで、足を挫くなんてことあるか?  むしろ挫いていたとしても、それでも立ち上がってくるのがレオというものだ。 「お、おい、マジかよ…?」  おれはほんの少しだけ心配になった。立ち上がれないほどなのか、と。 「ユイト、悪い……手、貸してくれないか?」 「ああ、わかった」  小走りで駆け寄って、プールと言うにはゴツゴツした縁に手をつく。おれはレオの弟子なのだから、頼まれれば動くのは当たり前だ。 「ほら、大丈夫か?」  と、片手を差し出した。レオは水の滴る髪をそのままに顔を上げた。  ……ニヤッと、不適な笑みとカチあった。  その瞬間、レオは俺の手を掴んでグイッと引っ張った。おれはされるがまま、顔面から水面へ突っ込む。  レオの力は強い。当然だ。なんせ魔族の血を引いている。人間であるおれが少しも抵抗できなかったのは仕方ない……  いや、違う。  その瞬間のレオの表情に見惚れた。キラキラしていた。  他愛のないイタズラだとわかった上で、可愛いな、なんて思った。 「プハッ!!おい!?何すんだよ!?」 「あっははは!!」  顔を上げてゲラゲラと笑うレオ。察したクラスメイトたちもつられて笑い声を上げる。 「この程度で俺が足挫くなんてあり得ないだろ!アハハッ、ユイト!ずぶ濡れだな!!」  ふふ、くすくす、と堪えられないと笑うレオに、おれは呆れて、でも愛しさを抱いて、いつの間にかゲラゲラと笑い声を上げていた。 「おい!オレらもいれろよな!」 「ヤッホー!プールだぁ!!」 「うわっ、思ったより冷たいな!!」
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