6人が本棚に入れています
本棚に追加
なんだ?どうかしたのだろうか?
クラスメイトたちが訝しげな顔をし出した時だ。
「っ、イテェ……足、挫いたかも」
はあ?と誰しもが首を捻った。だってあのレオだぜ?たかだか突き飛ばされたくらいで、足を挫くなんてことあるか?
むしろ挫いていたとしても、それでも立ち上がってくるのがレオというものだ。
「お、おい、マジかよ…?」
おれはほんの少しだけ心配になった。立ち上がれないほどなのか、と。
「ユイト、悪い……手、貸してくれないか?」
「ああ、わかった」
小走りで駆け寄って、プールと言うにはゴツゴツした縁に手をつく。おれはレオの弟子なのだから、頼まれれば動くのは当たり前だ。
「ほら、大丈夫か?」
と、片手を差し出した。レオは水の滴る髪をそのままに顔を上げた。
……ニヤッと、不適な笑みとカチあった。
その瞬間、レオは俺の手を掴んでグイッと引っ張った。おれはされるがまま、顔面から水面へ突っ込む。
レオの力は強い。当然だ。なんせ魔族の血を引いている。人間であるおれが少しも抵抗できなかったのは仕方ない……
いや、違う。
その瞬間のレオの表情に見惚れた。キラキラしていた。
他愛のないイタズラだとわかった上で、可愛いな、なんて思った。
「プハッ!!おい!?何すんだよ!?」
「あっははは!!」
顔を上げてゲラゲラと笑うレオ。察したクラスメイトたちもつられて笑い声を上げる。
「この程度で俺が足挫くなんてあり得ないだろ!アハハッ、ユイト!ずぶ濡れだな!!」
ふふ、くすくす、と堪えられないと笑うレオに、おれは呆れて、でも愛しさを抱いて、いつの間にかゲラゲラと笑い声を上げていた。
「おい!オレらもいれろよな!」
「ヤッホー!プールだぁ!!」
「うわっ、思ったより冷たいな!!」
最初のコメントを投稿しよう!