2.ユイト

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 とはいえ本人の性格と言えば、自堕落で面倒臭がりで適当。金と酒と女にダラシなく、とにかく口が悪い。  どれだけ素晴らしいものを持っていても、それらを踏み躙るほどに性格が悪い……時もある。  でも基本的にお人好し。そしてものすごく脆弱な精神の持ち主なのだった。難儀な性格だ。  というわけで、この日もおれたちは授業時間いっぱいにレオに立ち向かい、砂埃と汗と悔しさに塗れながら、ゼーゼーと呼吸を乱して負けを認める他なかった。  レオは涼しい顔で汗ひとつかいていない。息も荒げていない。というか最近知ったのだが、おれたちとの格闘訓練の時、レオは別の何かを考えている。もしくは脳内で何かを暗唱している。  ……そうしないと人より性能のいい脳が、最速で最適のフルカウンターをしてしまうからだと。意味不明だ。 「あっちぃ……」 「僕らの運動量だけハンパないんだけど……」 「なんでレオはそんな涼しい顔してられるのよ……」  地べたに座り込んだクラスメイトたちがボヤく。かく言うおれももう動けそうにない。放課後の訓練で他の皆んなよりレオの動きには慣れているはずなのに、全く手が出ないのだから当然だ。 「あ、僕良いこと思いついた」  そう言ったのが誰なのか、皆んながそれとなく耳をそばだてる。 「最近僕らも魔術の腕上がってきたじゃん」 「まあ、ちょっとな」 「んでね、それぞれが得意な系統を駆使して、ここにプールを造るの、面白くない?」  一瞬の静寂。で、またも誰かが言った。 「土系統の魔術で囲いを造って、水系統の魔術で中に水を張れば良いのか!」 「そういうこと!」  そしてこういうアホな発想を実現しようとするのはいつも男子で。  女子が呆れた顔をする中、男子の一人が立ち上がって詠唱を始める。茶色い円環が構築されて、土の壁が盛り上がった。ただ、プールと言うにはいささか小さすぎる。
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