血塗られた密約

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血塗られた密約

 壁に飛び散った血しぶき、胴体から流れ出る鮮血。そして床にあったのは凶器と思われる包丁。織田信長を抱き起そうとしたのだろう、黒田官兵衛の服は血まみれだった。 「信長様、そんな……」  龍馬は申し訳ないと思いつつも織田信長の体をまじまじと観察する。切断面はギザギザとしており、頭はどこにも見当たらない。服に乱れは見られないから、不意を突かれたに違いない。もしくは――信頼を勝ち取っていた黒田官兵衛が殺めたか。返り血で犯人が分からないかと考えたが、現場には血染めのレインコートが落ちている。その線から犯人を割り出すのは難しいだろう。そうだ、ここには看護婦のナイチンゲールがいる。心苦しいが検死をしてもらうしかないだろう。
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