血塗られた密約

3/3
前へ
/22ページ
次へ
じゃあ、あなた方は別行動をしていたのですね?」  ナイチンゲールの問いかけに龍馬たちは頷く。 「他に単独行動をしていたのは――」 「宮本と山本だ」すかさず黒田官兵衛が言う。その瞳には「主人の仇を取ってみせる」という強い意志が見て取れた。「犯人は信長様を殺めるのみならず、首を持ち去っている! 首を持ち去るという考えに至るのは軍人や武将のはず」 「そう結論を急がなくてもよかろう。そう思わせたい者が犯人かもしれん」ダーウィンはひげを触りながら意見を述べる。「それと進化論的に言えば、織田信長は変化に適応できなかったということだな」 「貴様!」 「おっと、私を殺すことはできないはずだ。死ぬのは一日に一人までだからね」とダーウィン。 「おしゃべりはそこまでにしよう。時間がなくなるだけだ。簡単にまとめよう。犯人候補は黒田官兵衛、足利尊氏、聖徳太子、宮本武蔵、山本五十六、そして私だ。順にどこで何をしていたか述べるようにしよう」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  龍馬の予想通り犯人が分かりそうな発言はなかった。包丁は誰でも持ち出すことができる。手詰まりと言わざるを得ない。 「あの、現場にこれが落ちていたのですが」  ナイチンゲールが差し出したのは血まみれの小さな紙片だった。「検死をした時に見つけました。隠していてすみません。でも、皆さんの犯行時刻の状況を聞いてからの方がいいかと思って……」  折り曲げられた紙片を開くと、そこには「一対一で話し合いがしたい」と書かれていた。これは犯人のものに違いない。これで黒田官兵衛が犯人の線は消えた。ずっと一緒にいたのだ、こんな手紙を渡す必要はない。  しかし、この手紙はおかしい。龍馬は首をひねる。一度この手紙を渡してから、再度会うという面倒なことをする必要があるのだろうか。待てよ、もしかしたら――。  龍馬は聖徳太子の腕をつかむと、装飾品のついたブレスレットを思いっきり引っ張る。装飾に使われていた緑色の玉が弾け現れたのは――血染めのワイヤーだった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加